先生  あちょほぉぉぉぉぉっ ほぁあああああ はぃぃぃいいいいいいいいいいい
 いやーきょーもいい調子だなー。はっはっは。え?頭は大丈夫か?何言ってンだー、仮にも先生だぞー。頭ほど丈夫なところはないよ。いや、頭で石割れる、とかそーゆー話じゃなく。先生はねー、カンフーをやってたわけですよカンフー。中国拳法。実演。強そうだろー?はっはっは。
 習ったことあるのかって?あるわけないだろー。先生は数学専門だしね。体動かすと動悸息切れで救心が必要と思ったけれど、すぐ直って別に救心は買わなかったほどの体力のなさだからねー。格闘技なんか習いませんよ。実際。そんなもん習わなくても、先生は、「燃えよドラゴン」だの「少林寺」だの「クレージーモンキー笑拳」だのカンフー映画は見てるから。それくらい出来ますよ。え?ホントに強いのかって?まーね、自慢じゃないけど蛙と闘って負けたことはないぞー。はっはっは。ウェイトが違いすぎる?まあそういう見方もあるかもしれんけどね。はっはっは。

 で、何でみんなに先生のカンフーを披露してみたか、というと、今日は、カンフー映画を取り上げようと思ったからなんだよ。うん。いいよねー。中国拳法。特にねー、象形拳は楽しい。先生のお気に入りは酔拳だけどね。当然、バーチャファイターでは舜帝を使うぞー。基本だよ基本。勝てないけどね。はっはっは。他にも、蛇拳とか猿拳とか、あ、そうそう、リオンの蟷螂拳とか、鷹爪拳とか、ああ、五獣の拳とかもあったかな?鶴とか虎とか豹とか出てくるやつさ。鉄拳のキャラクターが使ってなかったっけ?知らない?ダメだろー若者がそんなことじゃー。若者はすべからくゲームすべし、ってーのはプラトンの言葉だと先生は信じている かもしれない気がするぞー。世の中にはねー、TVゲームをやりすぎると人格形成に何たらかたら、って話が結構あるけど、先生はそういう風潮に断固反対だ!それはなぜか!まさに君たちの前に反証があるからである!TVゲームが好きでも先生みたいになれる!・・・こら、「じゃあ、TVゲームをするのは止めよう」っ てのはどーゆー意味だ!

 まあ、そんなわけで象形拳のラインナップを見ていくと、ここで重大な疑問にぶち当たるわけだ。ひっじょーに深刻な疑問。ぶっちゃけた話、蛙拳ってのはないのかってゆーね、先生のアイデンティティの根幹に関わる疑問が湧いてくるだろー。いや湧くって。絶対。先生がパンチでも繰り出せばそれが蛙拳だろう?ちっちっち。あ、ちっちっちって何で舌打ちしながら人差し指を左右に揺らすんだろーね。どーでもいいけどね。はっはっは。いや、「蛙が使う拳法が蛙拳」ちゅーのは根源的な誤解だよそれは。人が喧嘩してたら、「人拳を使ってる」って言うか?言わんでしょー。人以外の動物あるいは人のある特定の様子でもいいけど、そういう通常の人にない動きを模して格闘技にまで高めたのが象形拳なんだから、蛙が蛙の様子で戦っててもそりゃ蛙拳じゃないよ。うん。そーゆー意味では、蛙として「人」の闘法を会得した先生なんかは、世界で唯一の「人拳」の伝承者だよ。え?「伝承」者なんて言って、先祖代々にでも伝わってんのかって?いやいや、先生のオリジナルだけど、伝承者ってカッコいーじゃないか。北斗神拳みたいで。はっはっは。
 とにかく、先生には蛙拳が使えないわけだから、こりゃ人が開発した蛙拳を探さにゃならんちゅーことで、調べましたよ。そしたらねー、えらいピッタリな題名を見つけちゃったわけだ。こんなピッタリに見つかっちゃうケースは経験ないなー。はっはっは。ってことで題名を発表するぞー!・・・もうドラムロールは諦めたけどねー・・・「燃えよデブゴン カエル拳対カニ拳」!

 サモ・ハン・キンポーのカンフーアクションコメディ、「燃えよデブゴン」シリーズは知ってるだろーけど、え?知らない?どーゆー少年時代を送ったんだ皆はー。先生が子供の頃なんか、何かッちゅーと香港映画がテレビで放映されていて、何かッちゅーと見てたもんだぞー。まあ、とにかく、コミカルデブが身軽なカンフーを披露しちゃってあら楽しー、ってシリーズがあったわけだ。もちろん、もともとはシリーズでも何でもないわけだけど、「スピード」がヒットした後、ビデオ屋に「サンドラ・ブロックの」って題名の前に入ったB級ものが並んだりするのと同じよーなもんで、「燃えよデブゴン」ってーのは「サモ・ハン・キンポーの」ってゆーぐらいの意味だよ。いや、最初の「デブゴン」はちゃんとブルース・リーのパロディだったけどね。

タイトル  原題は「老虎田鶏」。「老虎」ってのは、別に年とってる虎ではなくて、中国語の場合、特定の動物や植物に接頭語みたいにして「老」をつける使い方があるんで、ただの「虎」ってこと。田鶏ってのは蛙のことなんだけどねー。だから、「虎と蛙」って題名なわけだ。英題は、「Dirty Tiger,Crazy Frog」。「姑息な虎と間抜けな蛙」ってところか。なんちゅーひどい題名だ。まったく。どうやら、タイガーとフロッグという名前の2人が主人公の話らしいってことで、DVDを購入したぞー。日本語字幕も付いてる。ん?当然、この素晴らしい映画をね、生徒に伝えるのは先生の義務ですからねー。教材費だよ。当たり前だよ。はっはっは。

 で、先生は、蛙拳の正体を見極めるべく、一心にこの映画を鑑賞しましたよ。とりあえず日本語字幕もあったしね、内容も把握できました。

タイガー  ストーリーはねー、まず、タイガーのところに、3人組が殴り込んでくるんだ。別に後のストーリーとはなんにも関係なくて、とりあえず、タイガーってやつが、カンフーが使えて、そこそこ強い、ってことが明らかになるってだけなんだけど、とにかく、タイガーってのは、娼館のつけが払えなくて、困っていたところを、依頼を引き受けてくれれば借金全部払ったる、という金持ちの婆さんが登場するんだな。
奥さん  この婆さん、家出した夫を探して欲しいという。何と、夫の年は28歳!婆さんが取出した人相書きは、そうそう、皆の予想のとおり、サモハンなわけだ。一方この夫、サモハンは、賭場で遊んでる。その賭場に、女のスリが忍び込んでいて、別の客の財布を擦りとったところで見付かりピンチになる。女はすかさずサモハンに抱きつき、助けを求める。そこから、サモハンのこの映画最初の乱闘シーンに。さあ、ついに来た来た、ここから、この戦闘から遂にあの幻の「蛙拳」が披露されるんだ、とね、先生は画面に釘付けになりましたよ。とーぜん。
サモハン  しかぁぁぁぁぁぁああああああああああし!!!!サモハンの繰り出した技は、ごくごく普通の、いや、何が普通か、っていわれても困るんだけどね、取り立てて特徴のない普通の拳法ぢゃないどぅえすくぁああああああああ!!!!いやーなね、予感がしましたよ。それは確かに。でも、まあね、取って置きの秘奥義かもしんないし、いや、それこそ、これから、あの蛇拳に出て来たお爺さんみたいな達人に伝授されるってストーリーかもしんないしねー。もうちょっと観ないとわかんなかろうと先を観たわけだ。
不可視鎧  戦闘中に、サモハンは刀で切られたりするんだけど、全然平気。実は、鋼線で編んだチョッキのような「不可視鎧」を付けているということが判明。この鎧が後々のストーリーの軸になって来るんだな。
千手観音  サモハンの不可視鎧は、助けた女スリに盗まれちゃう。この女スリ、「千手観音」というあだ名で、腕をつかまれていても、いつのまにかマネキンの腕のすり替えて脱出してしまう特技の持ち主。トカゲみたいな人だねー。はっはっは。
 鎧を盗まれたサモハンは、ぶらぶらしていたところをタイガーに捕まる。タイガーはサモハンから不可視鎧の話を聞いて、一緒に協力して取り返そうと持ちかける。
 まず、2人は、部下に人殺しをさせて、棺桶を売って大儲けしているという街の有力者「棺桶王」に、偽物の不可視鎧を売り付ける。その頃、千手観音は、山賊兄弟に不可視鎧を売る話を持ちかける。この山賊兄弟の兄が「パンサー」で、もう、どうにもならないくらい弱そうな豹拳を使うんだ。パンサーをやってる役者さんは、ジャッキー・チェンの蛇拳で意地悪な師範をやってる石天(ディーン・セキ)という人。ジャッキーのカンフー映画には必ずこの人がいたような記憶があるけどね。まあとにかく、千手観音は、連絡用に伝書鳩をパンサーに渡して、去る。
棺桶王←棺桶王 パンサー→ パンサー

 別の線からパンサーは、不可視鎧をサモハンが持ってるという話を聞き、サモハンとタイガーの所に現れる。2人は、「鎧は棺桶王に売った」と言い、タイガーはドサクサのうちに、千手観音との連絡用の伝書鳩を蛙の死体とすり替えて手に入れる。 蛙の死体 このねー痛ましい映像が、この作品で唯一かえるが観られる部分なんだけどね。
 伝書鳩で千手観音をおびき寄せた2人は、不可視鎧を取り返す。2人の間で取り合いになり、サモハンが手に入れる。そのサモハンの所に、山賊兄弟のパンサーと「笑う虎」、それから、山賊兄弟の父親で、無敵の「カニ拳」を使う白眉和尚がやってきて、鎧の奪い合いになり、そこに千手観音も登場して・・・うーん面倒臭いから思いっきり端折るけど、結果的に、不可視鎧は、白眉和尚のものになって、サモハンとタイガーは逃げて、千手観音は白眉和尚に殺されちゃう。
笑う虎←笑う虎 白眉和尚→ 白眉和尚

 白眉和尚と山賊兄弟は、鎧を手に入れた勢いで、街で悪の限りを尽くす。サモハンはパンサー、タイガーは「笑う虎」にそれぞれ闘いを挑んで、これを倒す。んで、最後、白眉和尚と2人の闘いになるわけだ。ただでさえ強い白眉和尚が、無敵の鎧まで付けちゃったからには、こちらも秘奥義を出さなきゃまずいでしょ、やっぱり。ようやくここで、「蛙拳」の登場か、との期待が広がるというもんだ。
カニ対2人  カニ拳はねー、とってもいいです。なかなかレアな部類に入る象形拳だと思うけど、両手をハサミに見立てて、横歩きする様なんか、カニファンが観たら泣いて喜ぶと思うよ。ホント。先生はね、別にカニファンじゃないんでね。
 決着はねー、白眉和尚が着ていた不可視鎧がイバラに引っ掛かって、どんどんほつれていっちゃって、白眉和尚はそのほつれた鋼線で縛られて動けなくなる、というどーにも間の抜けた内容でつくんだ。その後、棺桶王から騙しとった金を2人で取り合う対決シーンがあって、奪い合ってるうちに災害義損金の募金箱にお金が入ってしまう、というオチ。これでお終い。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、肝心の「蛙拳」はどうなったのか、とゆーと、出てこなかったんだよ蛙拳。おいおいおいおいおいおいおいおいおおおおおおおおおおおおおおおおおおい、と先生は思わず画面に叫んじゃいましたよ。冗談じゃなく。「カエル拳対カニ拳」なんて題を付けておきながら蛙拳が微塵も登場しないなんてことがはたして許されていいのか。あまりのショックにカップラーメンの食べ始め時間が7秒も遅くなってしまったぐらいだぞー。だいたいねー、カニ拳はちゃんとカニなんだよ。横歩きとかするし。 五獣 カニなんてレアな象形拳を出しておいてなぜカエルを出さん!とゆーより、サモハン、途中で「五獣の拳」なんかやってる場合じゃないだろー!カエルはどーしたカエルは!「カエル拳対カニ拳」の題名はどこへ行った!とね、皆怒ろうじゃないか。歌おうじゃないか。語ろうじゃないか。カタロニア賛歌。バビロニア戦記。ルーマニアモンテビデオ。ランボルギーニカウンタック。ふう。
 まーね。先生は蛙拳を知らないわけだし、ごく普通の拳法で闘ってるように見えるサモハンだってもしかしたら蛙拳を使ってんのかもしれない。確かにそれは認めなきゃいけない。しかーーし。やっぱ「カエル拳」を名乗るからにはどっかちょびっとでいーから「蛙」を思い出させる動作がないといかんでしょー。いかんいかん。ずぅぇったいいかん。これは絶対、先生のファンを始めとする日本全国9780万人の蛙ファンの皆さんを騙すために付けられた邦題だよ。ん?蛙ファンはともかく、先生のファンなんかいるわけない?いや、いるって。ホントだって。
 百歩譲って二歩下がり、主人公の名前が「蛙」なんだからいいじゃないか、と考えることも出来なくはない。出来ないけどねー、カニが入ってるっていったのに、カニカマしか入っていないじゃないか、と文句をいったら、「カニカマボコを略してカニって言ったんだ」と反論された時にそれで納得するぐらい世の中に寛容になれば、出来なくもないよ。うん。
 でもねー。恐ろしいことに、日本語字幕は、タイガーはタイガーのくせに、フロッグは「デブ」なんだよ!パッケージで読まない限り、中国語を解さない限り、映画を全部見ても、「なぜ題名にカエルが入っているのか」という点は謎のままなんだぞー。

ユン・ピョウ  そんなわけで、この映画の評価は蛙的にサイテーです。普通のね、B級カンフー映画だと思って見れば、カニ拳なんて珍しいものも見られるし、それなりに楽しい映画なんだけどねー。ユン・ピョウがちろっと出てるしね。とにかくまず、題名変えなさい。まったく。


【作品データ】
 題 名 燃えよデブゴン カエル拳対カニ拳
 (原題:老虎田鶏、英題:Dirty Tiger,Crazy Frog)
 製作国 香港
 公開年 1980
 監 督 カール・マッカ 麥嘉
 出 演 サモ・ハン・キンポー 洪金寶
     ラウ・カーウィン 劉家榮