先生  さあ、前回ひっじょーに好評だったかえる先生の映画評。早速2回目をやろーというわけだ。一体誰に好評だったって?そりゃー当然、君たち生徒に決まってるじゃないか。はっはっは。大体ホームルームで話してるんだから。誰も楽しんでない?何を言ってるんだ。素直じゃないなー。隠すな隠すな。先生の話、聞きたいだろー。はっはっは。少なくとも先生は楽しんでるぞー。
 それで、2回目の話題をどーするか、ってことなわけだ。前回実写の蛙を取り上げたからねー。今回はアニメでいこうじゃないか、と思ったんだよね。うん。アニメといえばディズニー。それ以外ないでしょ。じゃあ、ディズニーといえばアニメなのかっちゅーと、『ロケッティア』みたいな実写映画もあるからねー。ああいう背中に背負って飛ぶ機械って、高速エスパーみたいだけど、実用化できんのかね。ロサンゼルスオリンピックの開会式で飛んでたのを見たような気がするんだけど幻だったか?あるとねー、楽しそうだろー。はっはっは。
 ん?で何の話をしてたか?ああ、そうそう、ディズニーのアニメだよ。うん。先生もねー、独身男性としてディズニーを見ている、という状況はあんまりカッコよくないかなー、と思いつつも、見ちゃうんだな、これが。いやいや、子供っぽいんじゃないって。ディズニーのアニメは大人も楽しめる上質のミュージカル映画ですよ。ホント。え?そりゃーもちろん、『ドラえもん』だって、『あしたのジョー』だって、『キャンディキャンディ』だって見るけど。だから何だー!全部名作だぞー!
 大体ねー。漫画もアニメも立派な芸術ですよ。ん?って誰に力説してるのかって?そりゃー決まってるだろー。「趣味の欄に漫画とかアニメとかは書かない方がいいですよ」などとアドバイスに見せかけた不当な偏見を押し付けた、あの●●の●●ってゆー結婚相談所の職員に言ってるんですよ。え?自分達には関係ない?いやいや、世の中にまかり通る非常識ってもんをキチンと伝えるのは先生の愛ですよ愛。教師の鑑だよね。まったく。はっはっは。いや、笑い事じゃないない。先生は怒ってるんだぞー。はっはっは。

 まあ、そんなことはさておき、肝心要の最重要機密事項、今日取り上げるディズニー映画の題名を発表するぞー。ドラムロールをねー、皆恥ずかしがってやってくんないから、先生持ってきましたよ。ドラム。叩けるのかって?馬鹿にするなー。先生はドラム叩いて十余年、嵐を呼ぶ男だぞー。はっはっは。裕次郎にね、似てるって言われたことあんですよ。嘘じゃないって。かえるなんだけどね。誰にって?今は教えなーい。教えられなーい。そんな先生は今年で30プラスアルファアロンアルファ。何をいっても上の空。ペケペンペンペンとくらぁ。はっはっは。センセのドラムを叩いてみれば、文明開化の音がする、ってなもんですよ。山高帽子にロイド眼鏡ですよ。皆ついてきてるかー?はっはっは。
 さあ、題名を発表します!
  (ドラムの音)
 ずばり!、こら、そこ、ドラムが下手くそなんてゆーな。前衛的な叩き方と言うべきだぞー。ずばり!、その映画とは、「イカボードとトード氏」!パチパチパチパチ。拍手拍手。

 題名素晴らしいでしょ。どこがって、そりゃ当然「トード氏」だよ「トード氏」。思いっきり「ヒキガエル氏」でしょ。先生の仲間はねー、不当に差別されていますからねー、なかなか「氏」なんて付けてもらえないんだよね。困ったもんだよ。蛙差別に対しては断固戦ってかなきゃなりません。
 え?トードはいいけどイカボードって何だって?そんなこと先生に聞いてどーするー。先生は数学専門ですからね。言葉は知らんわけだよ。まあ、人の名前みたいだけどね。はっはっは。先生もねー、最初は誤解してました。「イカ」の「ボード」だから、烏賊の板?スルメみたいなもんかな?と思ったわけだ。いや、ここは別にギャグじゃないぞー。で、実際に見てみたら、スルメは出てこなかったと、そういうわけ。

ビデオのパッケージ  ヒキガエルが題名に入ってる映画なんてね、しかもディズニーの映画ときちゃ、なかなか黙ってられるもんじゃないだろー。ないはずだよ。んでこれも見たくなって、輸入版のビデオを購入したわけだ。アマゾンドットコム様様だねー。神様仏様アマゾンドットコム様。語呂悪いなー。はっはっは。パッケージの表紙はこれ。これを見て先生は愕然としたね。どーこーにー「トード氏」がいる、ってゆーんだ?金返せ!っと叫びたい衝動をぐっとこらえてね、いや、英語で抗議ができないからじゃないない。冷静にね、あくまで冷静沈着な一蛙として行動したんです。でパッケージをひっくり返してみたら、裏面にちゃんといました。トード氏の雄姿が描かれていましたよ。ほらほら、冷静にしてればいずれ道は開けるんだぞー。いい教訓。まさに教師の鑑。しつこいか。はっはっは。でも、ちっちゃいなー。もっとねー大々的に蛙をね、中心にね、置いてくれればゆーことないんだけどねー。こんな所にもやっぱり蛙差別が行われている実例を見ることが出来るなー。

タイトル画面  それじゃーどんなストーリーなのか。その辺を見ていきたいわけだが、やっぱりわかんないんだなこれが。日本語字幕の付いていないんだからしょうがない。しょうがないったらしょうがない。とにかく、イカボードさんとトード氏が絡む場面がないことは確かなんだ。うん。完全なオムニバス形式で、1本目がトード氏、2本目がイカボードの話になってる。何か、無理矢理2つくっつけたよーなラインナップだな。実はシュルレアリスムを狙ってるとかねー。そんなこたあないか。はっはっは。

 それ以上のことはね、絵を見た限りのことしかいえません。

ベイジルのホームズ  一本目は、これこそ、ヒキガエル氏が大活躍する痛快無比の冒険活劇なわけで、はっきり言って先生にとって、一本目が終ったらこの映画も終ったも同然、というような重要度をもってるなー。トード氏編のナレーターは、シャーロック・ホームズ役者として有名なベイジル・ラスボーン。そうだね、ワトソン君。こんなのは捜査の初歩だよ。はっはっは。
お屋敷  まず、ヒキガエル氏は大金持ちなんだ。蛙大富豪ってわけで、大きな屋敷に住んでる。屋敷の主人のはずなんだけど、ヒキガエル氏はなんだか道楽息子、いや、別に親父がいるわけじゃないんだけどね、でも、「道楽」っていったら「息子」しかつなげようがないだろー。 トード氏 とにかく、道楽者で、一度熱中したら、世界がそればっかりになる一方、つぎの熱中ごとが出てきたら、以前のものはあっとゆー間に熱が冷めるとゆー、困ったちゃんなわけだ。まあね、先生も熱しやすく冷めやすい、激情型のかえるだけどね。でも、生徒への愛だけはいつまでも熱く煮えたぎっているぞー。はっはっは。こら、暑苦しいってゆーな!暑くない!熱いんだ!って漢字じゃなきゃわかんないか。
アナグマ  で、そんなヒキガエル氏にほとほと困ってるのが、友人のアナグマで、ネズミモグラに相談するんだ。一方、ヒキガエル氏は馬車に夢中。車を牽く馬と仲良く歌いながら調子よく走っていると、そこへ自動車が通りかかる。 ネズミとモグラ 自動車に惚れてしまうヒキガエル氏。惚れこんでおかしくなってる所を、ネズミとモグラが屋敷につれて帰り、道楽ができないよう、部屋に閉じ込めてしまうんだよ。ネズミとモグラによる蛙権の侵害のいい例だよ。いや、実際に権利侵害の事実があるかどうかはしらんけどね。はっはっは。
 閉じ込められたヒキガエル氏は、とっとと窓から逃げ出すと、馬と一緒にふらふらしていたわけだ。ちょうどその横を通り過ぎた赤い自動車を見て、どうしても欲しくなったヒキガエル氏は、その自動車の持ち主だという酒場の主人と、屋敷の権利を渡して自動車をもらい受ける。さすが蛙の気前よさが全面に表れた名シーンだね。ここは。ん?なに?前後の見境をなくしているだけ?いやいや、これは気風の良さってもんですよ。江戸っ子ですよ。くいねぇくいねぇ寿司くいねぇ。それにしても、先生に寿司をおごってくれる人がもう少しいてもいいと思うんだけどねー。皆無ですよ。なぜなんだろなあー。はっはっは。
牢に入れられたトード氏  で、せっかく手に入れたその自動車は盗品だったんで、ヒキガエル氏が泥棒として捕まってしまう。裁判で、酒屋の主人が証言に立つんだけど、「ヒキガエル氏がその自動車を売りにきた」と嘘をつき、ヒキガエルは有罪、牢屋に入っちゃう。こんな冤罪が許されていいのか!いいやよくない。ずぇったいによくない。悪人に報いを。酒屋の主人に正義の鉄槌を。仕事人を呼べ!藤田まことをつれてこい!とね、先生も画面に熱中してしまいましたよ。仲良しの馬のおかげで、何とか牢屋を脱出したヒキガエル氏が戻って見ると、屋敷の権利を譲った契約書をたてに、酒屋の主人とたくさんのイタチが屋敷の中に入り込んでる。で、あの契約書を取り返せば、屋敷も戻るし無実も証明できて、万々歳ということで、ネズミとモグラ、それとアナグマと4人、人じゃないけどまあいいじゃないか、とにかく4人で屋敷に乗り込むんだ。クライマックス、って雰囲気だろー。手に汗握るねー。
飛び下りるトード氏 あとはもう、ヒキガエル氏の大立ち回りで見事契約書を取り戻し、晴れて無罪放免、めでたしめでたしとなるわけだ。 飛行機に乗る これに懲りて、落ち着いたかと思われたヒキガエル氏は、ラストで今度、飛行機に夢中になっちゃう、ってところで終り。通の蛙ってそーじゃないとねー。落ち着いちゃったらいかんですよやっぱり。先生は落ち着いてるけどねー。教育者たるものどこまでも冷静沈着で、どんなことが起きても動じないだけの胆力をもってないとね、勤まりませんよ。ん?じゃあ、先生は勤まらないだろう?何故だ?先生はいつでもどっしり構えてるだろー。少なくとも体重が重い、ってことだけは同意できるはずだよ。うん。

 さて、英語ばっかりの割には意外と筋が追えてるだろー。はっはっは。まーね。本気を出せばざっとこんなもんよってなもんよってなもんや三度笠・・・と言いたいのは山々だけどねー、これには裏があるんですよ。裏。「ボス、この事件には相当深い裏がありますぜ!」みたいなもんですよ。このヒキガエル氏の話は、ケネス・グレーアムというイギリスの作家の有名な小説が原作になってるんだな。「The Wind in the Willows」。柳吹く風、みたいな意味だろうけど、もちろんこれは、日本語にも翻訳されている。それが「たのしい川べ」。挿絵もね、すごくいいんだよ。翻訳されたやつは、かの有名なハチミツ好きの黄色い熊を描いた人が描いてるからねー。この本は先生の愛読書だね。ホント。え?何?独身男が一人で児童文学を読んで何が悪い!30過ぎたら童話は読んじゃいかんと国会で青島幸雄が決めたのか?ちょっと古いか。青島幸雄は国会にいませんね。失敬失敬。そーいえば、「しっけい」ってあんまり日常で使わないなあ。
たのしい川べの表紙  んで、この『たのしい川べ』を読むと、モグラ君と川ネズミ君の交流が一つの主流にあって、もう一つにヒキガエル氏の冒険がある、というような内容なわけ。もーねー、モグラ君は地中を飛び出して川ネズミ君と暮らすんだけど、あるときふと、自分の家の匂いを嗅ぎつけて、帰りたくなってしまうところなんか、涙なくしては読めないよ。うん。ディズニーの「トード氏」は、このヒキガエル氏の冒険部分だけを取って、設定を変え、話の流れも多少変えて作ってあるんで、先生にも多少筋がわかったわけだ。種を明かせばそういうこと。なんだー、皆興味なさそうな顔してるなー。先生の話の面白さは保証付だぞー。一生懸命聞かないとわかんないぞー。ん?ほっといてくれ?おやおや、だいぶんトンガッテますなー。はっはっは。

 でも、本と映画とでは大分筋が違っていて、トード氏は騙されて捕まるんじゃなくて、ホントに人の自動車を勝手に運転して事故を起こしたから捕まっちゃうんだし、馬は別に活躍しないし、なんといっても、トード氏は最後、ホントに落ち着いて立派な屋敷の主人になっちゃうってとこがねー。どっちの展開が好きか、っていわれると、うーん。本かなー。どっちも蛙が重要な役目を果たしてるんでね、どっちも捨てがたいんだけどね。

 二本目はイカボードだけど、あんまり興味なくてね。解説する気がしません。ポイントとしては、あのビング・クロスビーがナレーターやってるんですよ。すごいキャストだよね、まったく。先生はずーっと「ビング」じゃなくて、「ピンク」だと勘違いしてましたねー。やけに桃色な人だと思ってたら違いましたよ。はっはっは。お詫びに歌っちゃいましょー特別に。
  ♪〜あぁぁぁいむ どぅぅれぃぃんみゅんおば ほわぁぁぁいっくりすまああああす〜
 頼むから止めてくれ?先生の体調なら心配するなー。そうじゃない?まあいいや。で、このイカボードは、ワシントン・アーヴィングの『スリーピーホロウの伝説』って有名な小説の主人公なんだそうだよ。先生は知らなかったけどね。数学専門だし。まあ、とにかくその小説のアニメ化ということのようだね。うん。
ジョニーデップ たしか、ティム・バートン監督ジョニー・デップ主演で、「スリーピーホロウ」っちゅう映画があったよね?あれはホラーだったと思うんだけど、このディズニーのイカボードはホラーっぽくなかったなあ。 イカボード先生 食いしん坊で場違いにお洒落な新任教師と地元のボス的マッチョ青年との恋の鞘当に、首なし騎士を絡めた話。何を言ってんだか先生にもわかんないけど、そんな話だったんだよとにかく。ジョニー・デップの方は、首を斬られる連続殺人の捜査に派遣された捜査員っていう設定だったからねー。 スケッチ・ブックの表紙  で、原作はどっちに近いのか、と思って読んでみました。新潮文庫にワシントン・アーヴィングの短編集『スケッチ・ブック』の中に入ってるから、興味があったら読みなさい。別に宿題じゃないけどねー。先生は数学専門だし。この本の一番最後が『スリーピー・ホロウの伝説』でね、読んでみると、ホントに食いしん坊で場違いにお洒落な新任教師だったんだよねー。ラストはちょっと違ったけど、ほぼ原作通りの話の流れでしたよ。うん。だからどうだってことじゃないんだけどね。はっはっは。


 この映画はねー。とりあえず最初の半分を見ればいいですよ。かえる的には。それと、『たのしい川辺』を読むといいね。かえる的には。あと、トード氏が特別出演している「ミッキーのクリスマスキャロル」もチェックしとくといい。もちろんかえる的にはってことだけどねー。

 人的にはどーだろーなー。一応、ゴールデン・グローブ賞を取ってマス。1949年の最優秀映画。ただし、カラー作品中、ってことね。まだあんまりカラーないころだからねえ。どうなんでしょ。はっはっは。


【作品データ】
 題 名 イカボードとトード氏
 (原題:The Adventures Of Ichabod and Mr.Toad)
 製作国 アメリカ
 公開年 1949
 監 督 ジャック・キニー Jack Kinney
     クライド・ジェロニミ Clyde Geronimi
     ジェームズ・アルガー James Algar
 音 楽 オリバー・ウォレス Oliver Wallace
 声の出演 ビング・クロスビー Bing Crosby
     ベイジル・ラスボーン Basil Rathbone

参考:『たのしい川べ』ケネス・グレーアム作 石井桃子訳 岩波少年文庫099 2002.7.18
   『スケッチ・ブック』ワシントン・アーヴィング作 吉田甲子太郎訳 新潮文庫 1957.5.20