司会: |
本日は、市民講座『地球の姿‐物理学的視点から』にお集まりいただきましてありがとうございます。本日の講師をご紹介します。市内の中学で数学を教えていらっしゃる、「かえる」先生です。拍手でお迎えください。
(パラパラとした拍手)
先生は長年、その明晰な分析力と熱心な指導で知られ、なかでもそのユニークな授業法には定評がある方です。本日は、テーマが専門分野と違っておられますが、物理と数学の相性の良さからでしょうか、先生は快く引き受けてくださいました。では、先生お願いします。
(かえる先生がひな壇へ。軽く一礼。)
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かえる先生: |
はっはっは。かえる先生だ。よろしくよろしく。
とりあえず、ここに立ってみたものの、え、今日は地球物理の話だったの?話したはず?いや、先生が聞いたのは「1時間で2万円」ってところだけだったけどなー。はっはっは。最近生活苦しくてね・・・。あ、別に最近でもないか・・・。考えてみれば昔から・・・。いやいやこっちの話。はっはっは。
で、何から話しますかねー。地球の姿・・・。うーーん。別に解説するほどのこともないと思うけどね。実際。あ、でもそういえばずっと疑問だったことがねー。あるわけです。
先生みたいなかえるも含めて、われわれ、ン?ちょっと偉そうな言葉になった?住んでるところが「地球」ってよばれるわけでしょ?ようは地面のことじゃないっすか。この「地球」って言葉、おかしくない↑?はっはっは。語尾を上げてゆってみました。精神年齢の若さを表してるんだぞー。はっはっは。おかしいでしょ。いや、笑えるって意味じゃなく。
地の「球」ですよ。たま。どうしても丸っこいもん想像するじゃないですか。ほんと。まったくなんで地面が丸いなんてねー。言うんだろーかねー。
え、地球は球体だから「球」と呼ばれるに決まっている?はい、今発言した人。間違ってる。はっはっは。未だにそんな迷信信じてる人がいるとはねー。いや、迷信です迷信。近代にできあがった迷信。地面が丸っこかったら、平らな板を置いたらぐらぐらしちゃうだろー。ボールに板載せるようなもんなんだから。このビルだって危なくって、講義なんかしてらんないぞー。はっはっは。どうもね。先生ぐらいの知性があると、矛盾点を見逃さないもんなんです。まあ、理科は苦手だったけどね。数学専門だからね。
じゃあどんな形をしているのか。そりゃもうぐらぐらしないためには平らにするしかないでしょう。地球は平らなんだぞー。はっはっは。何で丸いなんて思うわけ?え?航海に出た帆船が水平線の向うから現れるとき、マストの先から見える?ほんとに?幻でも見たんじゃないの。先生は見たことないなー。はっはっは。だいたい昔っからちょっと乱視ぎみなんです。水平線近くにいる船なんて見えるわけないだロー。はっはっは。
じゃあ何で時差は起こるのかって?飛行機見たことないの飛行機。そら飛んでんでしょ。北海道で見てるのとおんなじ位置に、沖縄で飛行機が見える?みえないでしょ?太陽だっておんなじだぞー。基本的な類推。科学的態度。はっはっは。太陽は上空をぐるぐる飛びまわってるわけだ。はっはっは。でも昇ったり沈んだりして見える?屈折屈折。光の屈折。性格じゃなくて。先生はちょっと屈折しているけどねー。とにかく、何だかわかんなきゃ屈折と思っときゃ間違いないよ。うん。
どうして地球が「球」だなんて迷信が広まったのか。ちょうどいいので、今日はその歴史を話すことにしよー。よかった。時間がつぶれそうで。はっはっは。とりあえずね。2万円ないと今週末はね・・。
(2人ほど教室を出ていく。)
聖書って知ってる?聖書。キリスト教のだよ。もちろん人間の。先生はキリスト教徒じゃないけどねー。実をいうと聖書なんか読んだこともないんだけど。光あれったら光ったみたいな話でしょ。いいの?ホントに?いや、かえるだしね。必要ないわけです。宗教なんか。はっはっは。クリスマスは好きだけどね。まあ侘しく過ごすことがね。多いわけですが。はあ。・・・・。
(ちょっと遠い目をして間を置く。)
あ。ちょっとトリップしていましたねー。失礼失礼。時間稼ぎじゃないぞー。はっはっは。
聖書を読む限りでは、って読んだことないって言ったばっかだけど、まあ伝聞ってことでね。許してほしいわけだ。はっはっは。で、聖書を読む限りでは、地球は平らだってことになってるわけだ。で、宗教改革ってのがありましたな。海の向うの話だし、日本のかえるにとってはどうでもいいことだけどね。はっはっは。
15世紀ぐらいだっけ?違った?まあどうでもいいや。その、宗教改革ってやつはイギリス、ユーモアの国ね。ジェントルマンの。先生はいわゆるノーブルなジェントルマンだからね。イギリス紳士ってわけだぞー。はっはっは。そうそのイギリスに伝播して、英国国教会とかなんとかになって、ローマ法皇と断絶しちゃうわけなんだけど。自分で何いっているのかわかってるかって?当たり前だロー。はっはっは。その、英国国教会が成立して、英国がカソリック圏から離脱するため、とりあえずその当時から既に常識だった、「地球は平らだ。」という考えをひっくり返そうとしたんだそうだ。ちょっと頭よさそうな自分。うん。歴史はちょっとね。興味があるわけです。文系苦手だけどね。んでもって、自分ところの権威を示すために、「地球は“球”だ」なんて大法螺を吹いたわけ。オオボラ。なんか変な言葉だよね。オオボラ。はっはっは。
桜の木を切ったりなんだりして遊んでいたワシントンが、それを聞いて怒っちゃって、「地球が平らだ」という信念のもとに戦ったのが独立戦争。アメリカもその当時は信念の国だったわけ。今?今は「球」神話の強化に熱中してるんだこれが。はっはっは。ワシントンを見習えワンとね。いかんわしんとん。洒落洒落。“駄”じゃない駄じゃない。意味がわからん?ついてこいよー。はっはっは。
(5人ほど出ていく)
第二次世界大戦の後も、結構アメリカが頑張ったらしいよ。いや、知人から聞いた話だけど。信用できるのか?先生の知人だ、ってことだけでじゅうぶんでしょう。知人もその知人から聞いたらしいけどね。はっはっは。
フランクリン・ルーズベルトが大統領だったわけだけど、スターリンだのチャーチルだのと一緒に、世界政府を作るつもりだったらしいんだよね。これここだけの話アルよ。小遊左流にね、迫ってみました。
そのときの合言葉が「世界は平らだ!」ってもんだったんだけど。平らな地球のイラストが入ったシンボルマークと国旗も決まってたんだけどね。国連が発足したときに、ルーズベルトが死んじゃったもんだから実現しなかったわけ。信じる?
そう、でアメリカが今何をやっているかといえば、1969年のアポロ月面着陸からスペースシャトル、火星探査などなど、事件を演出してる。え?何でそんなことすんのかって?知らんよ。そんなこと。政治関係は専門外だし。アメリカに聞きなさい。アメリカに。はっはっは。でも、月面着陸の映像はよくできていたなー。当時は子供だったけどね。お玉卒業ぐらいのね。はじめて月に降り立ったカエルになろうと決心したもんね。先生の知り合いに聞いた話では、あの映像はアーサー・C・クラークが脚本を書いて、軍主導で撮影されたものらしいね。場所?アリゾナの砂漠がロケ地だって。いやホントに。NASAって製作会社はドキュメンタリータッチのフィクションが得意なんだろーね。きっと。実は、スタートレックもそうらしいよ。まあ、想像だけどね。はっはっは。スターウォーズは違うらしいけどね。これも想像だけどね。はっはっは。
波乱万丈の迷信をめぐる物語。こんなところで。もう1時間たった?まだ?、え、まだ10分しかたってないの?もうないよ。話すことなんかないぞー。はっはっは。
(司会が横から)
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司会: |
素晴らしいお話ありがとうございました。あまりにも密度が濃かったため、ちょっと時間が余ってしまったようですので、質問の時間にしたいと思います。めったにない機会でもございますので、どなたか、あ、3名しかいらっしゃいませんが、質問があればお手を挙げてください。
(70歳ぐらいの男性が手を挙げる)
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質問者: |
今日の講義、大変興味深く聞かせていただきました。ちょっと疑問なんですが、地球が平らだとすると、その平らな地球はどんな姿になってるんでしょうか。
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かえる先生: |
「平らだとすると」なんて仮定の話をされては困りますねー。はっはっは。迷信から抜け出していないですね。ほんとに。姿。姿ですか。そんなこと良くわかんないっっす。東京生まれの東京育ちだし。あんまり旅行もしたことないんだな。うん。かえるにはパスポートもないしね。変温動物としては熱帯のがありがたいんだけどね。まあ平らな円盤みたいなレコードみたいな形なんじゃないの。端っこ?南極でしょ。氷ってるから水も落ちないし。だから真ん中は北極なわけで。その下?象がいるに決まってるでしょ。象。基本だよ。ウパニシャッドですよ。瞑想瞑想。はっはっは。え?象の下?亀。でっかいやつ。その下?ああ、その先聞きたいことはわかりました。いや、その下はひたすら亀。どこまで行っても亀。無限の亀。夢幻の亀かも。はっはっは。あ、文字にしなきゃわかんないか。高度すぎて。はっはっは。
何でそんなこと知っているかって?瞑想ですよ。瞑想。酒飲んで座っているといろんなもんが見えるわけです。かえるに酒はちょっとやばいんだけどね。脱水症状おきやすくてね。水分ないと致命的ってなわけで。はっはっは。その、瞑想によって見えるんです。亀が。いやべつにトラウマはありませんよ。はっはっは。だいたいかえるに子育て何かないですからね。まあ子育てするかえるもいるらしいけどね。先生は生まれたときからひとりだしね。トラウマって概念はありませんねー。はっはっは。
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質問者: |
でも、「重力」って考え方はどうなるんでしょう?平らな地球で重力はどういう風に働くんですか?
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かえる先生: |
重力ね。重力。物理苦手でね。高校入るでしょ。いや、かえるも入るんだって。物理ってもんが独立してあるじゃないですか。もうその時点でダメだったからね。挫折。・・・重力なんてまあいいじゃないですか。重要な問題?きっと亀が磁石みたいに磁力を発揮してんだって。無限の亀だしね。だいじょぶだよきっと。そんなとこで。方位磁石も使えるしね。
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質問者: |
世界一周ができるでしょう。
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かえる先生; |
そう?行ったことあるの?金持ちだねー。先生はそんなことは信じません。マゼランだかクックだか知らんけど。平らな円盤でも出来るでしょ一周。ぐるっと。はっはっは。まっすぐ進んでなかったんだって。きっと。
ああ、亀の磁気作用が中心に向かってはたらいてるせいで空間が歪んでるんだよきっと。まっすぐ進んでるのはいわゆるリーマン空間上の最短距離を進んでるせいで曲がっているってことで。さえてるな今日の自分。はっはっは。ちょっとそれっぽいでしょ。意味はわからんけどね。数学だけどね。まあ、専門分野と違うからね。え、数学の何を専門にしているのかって?・・・・・。指折り足し算ですかね。とりあえず指でいくつまで足し算できるか。はっはっは。冗談冗談。そんな冗談でもないけど。まあ冗談。いまは“教育”こそが専門分野です。うん。愛する生徒のためにね。頑張ってるわけです。はっはっは。
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質問者: |
先生が“常識”とされている方が迷信である可能性をお考えになったことはないのでしょうか?
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かえる先生: |
え?なんだか、こういう市民講座に来る人の意識ってやっぱりちょっと偏ってんのかなー。はっはっは。常識というからには大多数に通じる考え方のことをいうわけだぞー。外に出てちょっとインタビューでもしてごらんて。10人に聞いたらまあそうね、7人は「平ら」って答えるから。後の3人はNASAの映画を見てほんとだと思っちゃってる人ね。けっこういるんだよね。そういう人。今日はその30%の人が集まったわけか。はっはっは。火星人襲来のラジオを聞いてパニックになる人がいるくらいだからね。オーソンウェルズのやったやつ。伝説的でしょ。映像がついていりゃまあ騙される人もいるよね。はっはっは。
だいたい丸かったら大変だぞー。端っこ行ったらどんどん坂が急になるだろー。はっはっは。滑って落ちちゃうぞー。まったくね。そのうえ回転なんかしていた日にゃ忙しくってしょうがないっしょ。玉乗りしてるようなもんだもんね。平らに決まってるじゃん。
司会の人もそうおもうでしょ?
(突然振られてびっくりする司会)
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司会: |
え?いや、まあ、その。仕事ですし。ええ。そんなわけで。ちょっとコメントのしようがね。ないというかなんというか・・・。はあ。
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かえる先生: |
司会の人もああいってるしね。口ごもってんのはお客さんへの配慮ですよ。それが世間の常識ってもんですよ。ほんと。はっはっは。ということでね。常識なわけです。
国際的に見ても当然そうだぞー。先生もね。インターネットなんか使うわけです。コンピュータはちょっと強いわけで。数学専門だしね。「The Flat Earth Society」っていうサイトがアメリカにあるんだよね。まあ内容はよくわかんないけどね。英検3級挫折だし。まあでも題名ぐらいはわかりますよ。「平ら、地球、協会」でしょ。英語得意?そう、よかった。他にもいっぱいあるみたいだから、そっちで見て。
時間どう?もう1時間たった?まだ?後30分?まあ、きょうび1時間の講義を1時間もやると、嫌われるっていうからね。30分前に終ってあげるのが親切というもんでしょう。司会の人、いい?半額にするなんて言わないでヨ。お願いしますよ。生活かかってんだからホント。
まあ、そういうことで今日はおしまいお疲れさん。はっはっは。お呼びがかかればまたいつでも講義しますよ。今度はあらかじめ題を教えといてね。困るから。え、教えたはず?いや、それは最初に聞いたけどね。先生の記憶に残ってないんじゃねー。意味がないだロー。てことで2万円よろしく。はっはっは。
(司会、あきらめ顔でひな壇へ。残った3人も帰り支度中。)
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司会: |
えー。お時間は若干残ってはおりますが、講義はその内容が重要でございますし、先生も熱の入ったお話でお疲れのご様子ですのでここで終了したいと思います。(話している間に3人は出て行く。出て行く3人に向かって大声で、)
さて、市民講座ですが、今後も現場の教師の方をお招きして市民の皆様の文化的生活に貢献していければと思っております。費用も実費しかいただいておりません。今日みたいなのばっかりじゃありませんよー。変な噂立てないで下さいねー。・・・・
(録画の内容はここまでだった。)
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