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事態の収拾
当時の記録によれば、この乱闘に関しては「重傷者7名、負傷者79名」となっており、「これほどの規模の乱闘は過去例を見ない。」と付記されている。
また、この惨状を重く見た、イカルスら他の教師会のメンバーは、カル派とリカー派の和解および、神エルの姿に関する統一見解を固めることとし、カルとリカーを含め、教師会を10数回にわたり開催した、となっている。
このときの教師会の様子は、記録に明らかではないが、最終的に教師会が決定した結論は、つぎのとおりであった。
- エルフロッグ教における神は、自身に模して、ジャマエルを創造したことは、教典の記述にあるとおりであり、ジャマエルは、おたまじゃくしから成年かえるまでの様態すべてを含む語であることを考慮すれば、どちらかの姿をしている、というのは、論理的矛盾である。
- 前項から判断して、神エルは、ジャマエルの本質そのものの形態を持つものであり、おたまじゃくしから成年かえるまでの様態すべてであって、どちらでもあり、どちらでもない。
- 前2項より、神エルの姿は、現実世界の中で固定化し、視覚化することは不可能なものであり、今後、神の像を作成し、それを拝することを禁止する。
- 前項の禁止に合わせ、現在各教会にある、「神エルの肖像」はすべて廃棄する。
- 前項までの決定により、今後、神エルの姿に関する一切の議論を禁止し、また、それを原因とする争いの一切を禁止し、現在それを原因として争っている場合は、その関係修復を図る。
教師会のこの決定以降、事態は収拾に向かい、カル派とリカー派も和解した。(教師会の席では、その後も対立は続いていたようだが。)
この事件により、エルフロッグ教は、偶像崇拝を禁止し、純粋な一神教として発展を遂げることとなる。
1人の少年の疑問は、エルフロッグ教そのものを揺さぶったのであった。(注)
注. ヒルベルト沼におけるかえる社会は、この後19世紀後半に入り、一定の近代化を遂げるが、その思想的背景には偶像崇拝廃止がある、といわれている。
20世紀初頭、これら一連の「かえる文書」が発見されたときには、すでにヒルベルト沼にかえるはおらず、どのような形での消滅があったのかは、今後の研究により明らかにされるものと思われる。
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