宗教戦争顛末記

宗教戦争顛末記

 ケロット・ロー著
   神は、自身の姿を模し、二体のジャマエルを創った。
   (エルフロッグ教典(注1) 第1章3節)
 
 3781年(注2)、夏、初等学校(注3)の生徒に浮かんだ疑問は、その後、この国を二分する大規模な争いへと発展することとなった。
 本書は、この一連の動きを記録したものであり、この事件に関わるジャマエルらを批評、非難するためのものではない。
 彼等の行動を理解し、解釈することが、今後の発展に繋がるものと考え、ここに記すこととする。



 注1.ヒルベルト沼中には、かえる社会が展開されていた。その構造は原初的で、結合は緩やかであったようだが(「ヒルベルト沼におけるかえる社会」ベルト・モンディ著)、統一宗教、および、統一の権力機構のあったことが確認されている。(「かえると宗教あるいは王権」ルモント・ベディ著)
 この統一宗教の名前がエルフロッグ教であり、原始的偶像崇拝と、原理的一神教とが複合した形態をとる宗教であった。

  2.エルフロッグ教暦。神エルによる創造の年を1年として起算した暦。
西暦との関係は明確になっていないが、最新の研究結果によれば、エル暦元年=紀元前2000年頃とされているため、18世紀中の話であると想定される。(「放射線測定によるエル暦の解釈」ディトモント・ルベン著)

  3.原典では、「原初、教育施設」となっているが、ここでは、「初等学校」と訳した。ただし、ヒルベルト沼のかえる社会における学制については不明な点が多く、正確とはいえない。


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