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今も残る大蝦蟇伝説 − 麻布がま池 −

 ※ 引用文中、文字フォント、文字色等を変更して強調している部分は、当サイトで付したもので、原文とは関係ありません。

■ 大蝦蟇の作り方 ■

 蛙というのは、どの程度まで大きいもんなんでしょうか。普段見かける蛙だと、掌サイズでも、結構大きい部類に入りますよね。
 図鑑を見てみると、現在知られている蛙のなかで、もっとも大きいのは南米にいる「ゴリアテガエル」。「ゴリアテ」といえば聖書に出てくる、ダビデに倒された巨人の名前ですが、聖書によれば6アンマ半。1アンマはギリシャの単位キュビトと同じで、中指の先から肘までの長さです。約45〜6cm。とすると、身長3m以上だったわけですね。「名は体をあらわす」というか、「名で体をあらわした」というか、ゴリアテガエルはさすがに3mはないですが、大きいものだと体長30cm以上、体重は3kgを超えるのだとか。生まれたての赤ちゃんぐらいの重さがあることになります。

蟇法師  しかーし。「仮面の忍者赤影」の第一話と第三話に登場する蛙は、いわゆる怪獣サイズ。ゴリアテガエルなど問題になりません。人も家を踏み潰すほど。しかも元々は普通のヒキガエル(?)だったらしい。どうやって育てたのでしょうか。
 この蝦蟇は、霞谷七人衆の一人、蟇法師が操る怪獣なのですが、蟇法師曰く、「千年蟇はわしが育てた」そうですので、育て方の秘密は蟇法師が知っているようです。でも、本編の中で、その方法は明かされません。

 蛙の名前が「千年蟇」というところを見ると、千年生きたから大きくなったということでしょうか。一般に、動物は、寿命がある限りひたすら成長を続ける種と、成熟すると成長が止まる種とに分かれます。爬虫類なんかは成長を続ける方だし、哺乳類は成長が止まる方。蛙は成長しつづける方だということでしょうか。
 それ以前に、どうやったらヒキガエルを千年生かすか、ということの方がもっと難しい問題です。「特殊な餌を与えて・・・」と解説しているものもありますが(LDBOXに入っていた解説書とか)本編の中では、そのような話は出てきません。育てる人間も千年生きなきゃいけないし・・・。蟇法師は老人ぽくはありますが・・・。
千年蟇  とすると、蟇法師の家系では千年も前から代々巨大ガエルを飼育しており、今(というか戦国時代に)やっと術として使えるようになった、ということでしょうかね。まあ、あの半分の大きさでも充分威力はあるでしょうから、「五百年蟇」ぐらいの時代から使っていて、親から子へ、脈々と受け継がれた「大蝦蟇」なんでしょう。
 でも、千年蟇が、つぎの年には「千一年蟇」になるとも思えないから、「千年」というのは長い時間の比喩的表現と受け取ったほうがよさそうです。蟇法師が自分で50年ぐらいかけて育てただけかもしれません。実際、千年蟇に接する蟇法師の姿は、永年手塩にかけて育てたペットをこよなく愛しているように見えます。



 大蝦蟇が欲しいときに、一生かけて(場合によっては子孫に期待しながら千年)飼う、というのは、通常の社会人としては、ちょっと現実的ではありません。もうちょっと手っ取り早い方法はないものでしょうか。

 「妖異百物語」という、昔の江戸川乱歩チックな作品を拾い集めた短編集がありますが、そのなかに、「人喰い蝦蟇」という話が載っています。辰巳隆司という、これ1作が雑誌に載った以外経歴がまったくわからない人の作品です。この中に、ヒキガエルを大きく育てる方法が出てきます。
人喰い蝦蟇  日本食蛙研究所所長の河上は、食用蛙を巨大化する研究をしており、「染色体倍加」によりそれを実現しようとしています。
 例を金線蛙にとっていうならば、その染色体は二十六であるから、雌雄間の交配により愛精した子の体内の染色体は、五十二を持っているかというと、二十六しか持たない。これを完全に五十二持たせることに成功するならば、その金線蛙の形態は少なくともすべての点で、倍の生育が保証されるに違いない

(辰巳隆司「人喰い蝦蟇」 鮎川哲也・芦辺拓 編 妖異百物語 第一夜 1997.2.20 出版芸術社)
 うーん。染色体を増やせば大きくなるのでしょうか?
 染色体の数は種によって概ね一定で、有性生殖であれば、親からそれぞれ半数(n)ずつの染色体をうけとり、発生します。したがって、染色体の数は2nになります。これを「二倍体」といいます。
 本の中の研究者は、どうも、これを染色体4nとなる「四倍体」、6nの「六倍体」を作っていけば、2倍、3倍と大きくなる、と考えているようです。何で????
 受精卵に高圧をかけたりして、減数分裂(2nをnにする分裂)を働かなくさせるなどにより、四倍体を作る、というのは実際に魚などでよく行われます。この4nの生物が、2nに比べて大きいか、というとそういうことはないようです。
 同じようにして、“3n”の生物を作ることができます。これが「三倍体」です。魚の場合、三倍体の雌は、成熟しなくなるという特徴があり、産卵をしないことから寿命が長くなります。そのため、同種の通常の体長よりも大きく成長することができます。
 この方法によって、大型のアマゴ等が養殖されています。でもこれは、染色体が多いから大きいのではなく、染色体の異常で生殖能力をなくし、成熟しなくなったことにより、寿命が伸びて、成長を続けたために大きくなったわけです。しかも雌限定。

 研究者の方針どおりに(仮にできるとして)蛙の染色体を100本にしようが200本にしようが、大型の蛙ができるわけではないような。
 そう思うのが、私のような科学素人の浅はかさ。実験はきちんと成功します。当初の目的を離れて(研究者本人としては離れていないのですが・・・)、食用蛙ではなく、ヒキガエルでの実験でした。
 そこには問題の怪物が、話に聞いた通りの恰好で、うずくまっていた。前世紀の生物を見るような怪奇な倍加化蝦蟇は、これが蛙の仲間かと疑うばかり、うずくまっただけでも優に一米半は越すほどのグロテスクな姿で、暗褐色のぬめぬめした背中に薄い灰色の線条が走り、黄褐色の腹部から胸部にかけては不恰好な皮瘤突起があり、灰白色乳液状の分泌物が絶えず皮膚面を濡らしていた。
「どうかね、体重六十瓩の蝦蟇は世界中何処にもあるまいね」
「驚きましたね。こんなに凄い発育状態とは思いも寄らないことでしたよ」

(辰巳隆司・前掲)
 体長1.5m、体重60kg。赤影の千年蟇ほどではありませんが、人間並みの大きさ。染色体倍加、なかなか有望ですね。
 でも、生物学の専門知識や、いろいろな実験設備が必要だし、出来上がった巨大ヒキガエルは「人喰い」だし、いまいちか。

 もう一つ、突然変異の定番、放射線をあててみるというのも有効でしょう。それも、実験として放射線をあてるのではなく、核実験の副産物として、浴びせてしまうのがよいと思われます。「人類の自然破壊に対する自然の報復」という副次的効果が現れ、生物が巨大化し、なぜか日本に上陸し、町を破壊する傾向がありますので。
ガバラ  ガバラというガマガエルの巨大化した怪獣が、「ゴジラ」シリーズの中に出てきます。放射線で大きくなった蛙の実例にしたいところですが、この怪獣は主人公の少年の夢の中に登場するもので、あくまで想像。でも、まったく同じ蛙怪獣が登場した別の番組があります。
 「おはよう/こどもショー」という昭和40年代に放映された子供向け番組があります。この中には、愛川欽也が声をやっていた「ロバくん」というキャラクターが出ており、そのロバくんにからむ悪者に、「ガマ親分」というのがいます。これはメジャーな話ですが、今回は関係ありません。この番組の一コーナーとして、毎日5分ずつ、特撮ヒーロー物(正確には、着ぐるみをきた人が、格闘するだけ)が放映されていました。「ウルトラファイト」のさらにチープなバージョン、といえばイメージの沸く人もいるかもしれません。「レッドマン」「ゴッドマン」「グリーンマン」とヒーローもどんどん変わっていきましたが、「行け!ゴッドマン」シリーズの時、製作が東宝企画であったため、ゴジラシリーズに登場した怪獣が、たくさん登場しました。この番組、現在(2002年4月)ファミリー劇場で放送中!  ガバラも例外ではなく、きっちり登場します。これは、夢オチではありません。
 どんな怪獣なのか、「全怪獣怪人<上巻>(剄文堂)」の「行け!ゴッドマン」のページから引いてみましょう。
南太平洋出身。もとはガマ蛙だったが、核実験の放射能の影響を受け怪獣になった。角と爪から10万ボルトの高圧電流を流して、相手を消滅させる。体表から毒液も。
核実験。無理だなやっぱり。10万ボルトが出せる怪獣ができても困るし。

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